椀方の彷徨人日誌（16）

椀方の彷徨人日誌

2006年5月5日編

5月連休は紀伊山地の秘境、大台ケ原を歩く
（1日目：西大台コース：大台荘～大台教会～ナゴヤ谷～タタラカ水～開拓跡～逆川～展望台～ワサビ谷～コウヤ谷～ヤマト谷～七ツ池湿原～中ノ谷～大台教会
2日目：東大台コース：大台荘～日出ケ岳～正木ケ原～尾鷲辻～中道～大台山の家～シオカラ谷～大蛇嵓～牛石ケ原～大台荘）

今回のコース周辺図

2006年5月5日（金）晴れ

5月の連休に、永年の念願だった大台ケ原を山荘で1泊して散策しました。

近鉄発行のてくてくまっぷ（２３）大台ケ原回遊コース
7時10分

近鉄阿部野橋

朝6時過ぎに自宅までタクシーの送迎予約を入れておいたので、スムーズに北大阪急行線の桃山台駅から地下鉄に乗って天王寺まで出ることができた。
近鉄阿部野橋駅で大台ケ原探勝割引切符を購入する。これは、近鉄電車と奈良交通バスの往復セット切符で料金も割引になるし、なんといっても乗換えがスムーズになるのが嬉しい。

丁度始発の吉野山行きの特急があったので、南大阪線経由で吉野山近くの大和上市駅まで近鉄特急に乗る。
橿原神宮を過ぎた辺りで、車窓から見える畑の中に色鮮やかな雄の雉が悠然と歩いているのを見つけた。
野生の雉を見るのは、小生がまだ小学生低学年だった頃だから本当に懐かしい。

8時30分

大和上市駅前から今度は奈良交通の大台ケ原行き特急バスに乗り換える。
特急バスと言ってもそこは、奈良県吉野の山間を走るバスだか大型バスではなく、助手席を入れても27人乗りの小型バスだから、大きなザックを持ったハイカーが乗り込むと、バスは満員になってしまった。
奈良交通の係りの方が人数を数えてみて、全員が乗れないと判ると直ぐにバスを増発して、全員が座れるようにしてくれた。
よくよく考えて見れば、これから1時間半も山間をぬって走るバスだから、乗客が立っていたら危なくて運転ができないということらしい(^^ゞ

2台連なったバスは山間を走りだす。
新緑が綺麗な吉野の山々を見ながら、大台ケ原に向けてバスがどんどん高度を上げていくと、山の斜面の所々に山桜の咲いているのが見える。
大台ドライブウエイを走る頃には標高も１，５００メートルを超え、木々もまだ芽吹く前の状態である。

10時00分

バスは目指す大台ケ原の駐車場に到着する。
割と大きな駐車場には沢山の自家用車が停まっていて流石に連休だと感じるが、人はそう多くない。
駐車場横にある宿泊施設「大台荘」に先ずはチェックインして、ザックの中から着替えなどを部屋に置いて身軽になる。

お弁当とお茶を買ってから、先ずは西大台方面の散策コースを歩くことにする。
西大台のブナ原生林

苔むした木橋の架かる中谷
10時30分

大台ケ原の散策コースは良く整備され人も多い東大台コースと、沢を渡る箇所が多く道に迷いやすい代わりにブナの原生林やバイケイソウの大群落が素晴らしい西大台コースとがあって、大台荘の管理人から天候が良いうちに行くことを勧められて西大台コースを歩くことにする。

駐車場横にある大台教会脇から沢に沿って細い散策道が下っていく。
道には落ち葉が厚く積もっていて柔らかく弾力があるところと、砕けた石で歩きにくいガレ場が交互に出てきたりする。

木々や沢を渡る木道は苔に覆われているが晴れているため湿度が低くて苔が乾いている。

11時40分

西大台の散策路は人もほとんど歩いていず、路は所々で途切れそうになっていて見失いかけてしまう。大台荘の管理人さんがいっていたようにここは霧が出たりしたら本当に迷ってしまうかもしれない。
念のため携帯電話を取り出してみたが・・・・案の定、圏外である(^^ゞ
それでも、原生林の中を歩く路の木々には所々に赤いテープが目印に巻いてあるので、それを頼りに進んでいく。

まだ新芽の出ていない林の中は太陽の光が差し込んでいて、遠くまで見通すことができる。
テレビで観たような霧に霞む原生林という幻想的な風景ではくちょっと残念であるが、安全に歩くことができるからこれで良しとしようか。

沢筋を下り続けていたら沢を渡る古びた吊り橋があり、そこを渡ると大台ケ原開拓後に出る。
かつて開墾されて畑が広がっていたと思われるそこは、今では原生林に戻りつつある。

開拓跡を過ぎた処まで来たら、西大台散策路は大峰山系の一つ経ケ峰から麓の小処温泉まで下る山道に出会う。
ここからもう少し歩いて逆峠近くで見晴らしの良いところがあるというので、そこで昼食を摂ることにする。大台ケ原開拓跡

バイケイソウの群落が広がる湿原
13時30分

ゆっくり昼食を摂って休憩をした後は、再び開拓跡まで戻り、今度はバイケイソウの大群落のある湿原を抜けて歩く。
まるで獣道のような細い散策路が湿原の中を貫いていて、その路の真ん中にまでバイケイソウの芽が伸びている。
たっぷり雨が降った後ならさぞや綺麗な光景だろうが、こんなところで霧に巻かれたらと思うとそれも不安である。

やや緊張感のある西大台の散策路だったが、ほとんど手付かずの原生林が、大勢の観光客を寄せつけない迷いやすい路のお陰で守られているのも皮肉な気がする。
本当に路に迷いやすいところが多く、特に沢山の沢を渡る辺りが路が消えかかっているので、雨上がりでは尚更路に迷いやすく注意が必要だろう。

自分自身で赤テープを持っていって、迷いやすいところに目印を付けて歩くとか、心配になったら直ぐに引き返す位の慎重さが必要だと思った。

大台荘に戻って風呂でさっぱり汗を流し夕食を摂った後は、星空を観に駐車場に出る。
やや薄く雲がかかっていて半月が出ていたので満天の星空とはいかなかったが、普段の生活では見ることの少なくなった沢山の星が見えてとても綺麗だった。

5時00分

朝4時前に起床して顔を洗い、懐中電灯を持って日出ケ岳まで50分位歩き、日の出を観に行く。
真っ暗だった山道も次第に明るくなってきて、突然沢山の鳥達が鳴き始める。
空の色は朝靄で灰色から朝焼けに染まりだし、日の出が近いことを教えてくれている。

朝5時、日出ケ岳の展望デッキから下に熊野灘を見下ろし、遠くには雲に霞む富士山が見える。
朝日が昇るのを観ると心のなかに何か感動が生まれるのは何故だろうか。
ここ吉野の地が山岳修行の霊地であることは、このような厳しい山中で修行積むことで神経が研ぎ澄まされ、夜の星空や月明かり、そして昇る朝日を眺めるなど、自然の摂理を体一杯で感じ取ることが宗教的体感となっていくのだろうか。

すっかり明るくなった山道を下って大台荘に戻ってから一眠りし、朝食を食べる。
熊野灘から遠く富士山と日の出

正木ケ原の立枯れ倒木

 8時30分

朝食を摂った後、支度をしてからチェックアウトを済ませ、用意してもらったお弁当をザックに詰めて歩き出す。
今日は一般的な東大台コースを歩くことにする。

明け方歩いた日出ケ岳に向うコースも、明るくなってから歩くとまた違う趣がある。
日出ケ岳から尾鷲方面へ下る大杉谷コースは昨年の大雨による崩落が酷く通行止めになっているそうだ。

小生達は日出ケ岳から正木峠へ向う木道を登り正木ケ原へと歩く。
立ち枯れたトウヒが熊笹の中に林立する様は今まで見たこともなく西大台とは全く違う雄大な風景である。
ここでは野生の鹿が良く出てくる場所とのことだが、今年は冬が寒くてまだ姿を見ることが少ないという。

10時30分

正木ケ原を抜け、尾鷲辻避難小屋近くで休憩を取った後に、再び駐車場へ抜ける中道を歩いてペットボトルのお茶を補給する。
雨が多い大台ケ原では珍しく今日も快晴で暑くなってきたが、木陰に入ると心地良い風が吹き抜ける。

駐車場脇から今度は大台山の家横の斜面に付いている急な石段を下ってシオカラ谷まで一気降りる。
白褐色の石が綺麗な沢に架かる吊り橋を渡り、シオカラ谷でしばし休憩する。

ここからは再び一気に斜面を登るが、こちらの斜面は石段ではなく、シャクナゲの大群落の中を昇る険しい山道で、一歩一歩踏みしめて歩けばいつの間にか上りきることができた。
シオカラ谷



大蛇嵓
12時30分

大台ケ原といえば必ず出てくる絶景ポイントの大蛇嵓。
東大台から大峰連山を望む断崖絶壁は垂直に約800メートルものスリルある風景を見せている。
滑りやすい大岩には鎖の柵が付いているものの、高所恐怖症の気がある小生は、とても最先端までは歩けませんでした(^_^;)

大蛇嵓から牛石ケ原に抜けたところで昼食を摂り、暖かい日差しの中靴を脱いでのんびりと寛ぐ。
休憩後に再び大台荘まで戻り、美味しいコーヒーを飲んで休憩しお土産を買い求める。
乗車予約を取っていた15時10分発のバスで大和上市まで降り、近鉄特急で帰宅の途につく。

2日間たっぷりと楽しんだ大台ケ原。帰りのバスから観る風景も、余りに雄大で素晴らしい風景を観た後ではありきたりのものに思えてくるから不思議だ。
さて、今度は何処へ行こうか(^^)

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